殿様気分とロールキャベツ

忘れないうちに、今シーズン第1回釣行時のランチについて記録しておこう。

いつの日からか、「ウインナー&シシトウのソテー」が我々の前菜の定番となっている。もし、日本ソーセージ消費促進協会なる団体があったとしたら、特命大使に任命されてもいいぐらいだ。ところがこの日は事前の連絡が徹底できておらず、現地にいってから「あ、忘れた!」という展開。無類のシシトウ好き(珍しい?)としては、やや残念なスタートとなった。

エゾシカ刺身の水菜添え。スライスした新鮮なフィレ肉を、おろしニンニク/ショウガとともに。写真はジーザス提供

その代わりとしてテーブルに乗ったのが「エゾシカ肉の刺身」である。我が故郷の友人がハンターをしており、とびきり新鮮なフィレ肉を冷凍で送ってくれたのだ。これを薄くスライスし、おろしショウガやおろしニンニクと一緒に醤油でいただくと、これがもう絶品。あ、生食については、あくまで自己責任ということで各自了解しております。

さて、メインディッシュは「ロールキャベツのトマト煮」。事前打ち合わせの時に、まだ屋外は寒いので何か体が温まるものを、ということで決まったメニューである。熱したダッチオーブンで野菜や鶏肉を炒めた後、トマトのホール缶を開け入れ、具が浸る程度の水を注ぐ。そこにスーパーで売っている冷凍のロールキャベツを投入。後はブイヨンやコショー等で味付けし、しばし煮込む──傍から見ている限り、確かこんな流れだったような気がする…(メンバー諸氏、間違いがあったら訂正してくださいな)。いつものことながら調理進行中の私は基本的にお任せモードである。ちょっとした殿様気分だ。いや白状すると、これまで様々な料理に「過度な」味付けを施してきた罪歴があり、そこかしこから“静観してろビーム”が浴びせられるのだ。我が調理長を中心に手際よく作業が進む。

ロールキャベツのトマト煮。鉄鍋の黒とトマトレッドのコントラストが実に官能的だった。写真はジーザス提供

30分ほどが経過し、ダッチオーブンから香り高い湯気が漏れ出てきた。もう我慢できん。一同が見守る中、いよいよ蓋が取り去られた。──顔を近づけるとメガネが真っ白に曇った。やがてレンズの向こうに、ふつふつと煮立ったスープの中に横たわるロールキャベツたちが姿を現した。各自プレートに盛り、我先にと食らう。旨い!旨いっすよ。ジューシーで濃縮された味わいが冷えた体の隅々までじんわりと広がっていく。至福の瞬間だ。

かなりのボリュームだと思っていたが、あっという間にダーチオーブンの底が顔を出した。いかん!パスタはどうするんだ? 予定では余ったトマト味のスープでパスタを作ることになっていたのだ。料理長はすぐさま水を追加し、鍋肌に残っていた具材を混ぜ合わせてソースのベースを作りだす。そこにパスタを投入し、茹でながら余分な水分を飛ばす。待つこと5分。熱々のアルデンテが、ランチの最後を彩った。粉チーズも絶妙な溶け具合でからんでいる。お見事。世は満足じゃ! ここぞとばかりにパセリ(テーブル調味料)を取り出して有終の美を飾ろうと思った私だったが、容器に「賞味期限:2009年10月」の文字を見つけ、こっそりとポケットにしまい込んだのだった。(By ドングリ)

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