急発進、急ブレーキ

首都圏近郊にも久しぶりにまとまった雨が降った土曜日。もっとも、干天の慈雨と喜ぶほどには長続きせず、翌日はまた太陽が照りつけると天気予報が告げていました。雨後の晴れ間──水かさが増し、しかもエサが大量に流れてくることに狂喜乱舞する渓魚の姿が脳裏に浮かびます。妄想の世界には絶好のロケーションが広がり、ドライフライにド派手に出る良型が

好機到来!? 週明け早々の締め切りに備えて土日は仕事に充てる段取りだったはずが、いてもたってもいられなくなり、日曜はまたしても半日強行軍を決行することにしました。過度な期待は往々にして裏切られることは分かっております。でも、こんな日に仕事が手に付かないことも幾度となく経験済みです。無理してでも川に赴けば、例え玉砕しても納得して仕事に打ち込めるってもの。選挙も帰宅してからで間に合うし(言い訳だけが巧くなっていく)。

さてさて。近くて手軽な鶴川か、通い慣れた鹿留川か、型にも期待できる日川か。日曜日の朝、3時半に目覚めた段階でもまだ行き先を決めきれずにいました。ともかく出発して、走りながら考えよう。調布ICから中央道に乗った時はまだ真っ暗だった空が次第に白みはじめます。見通しの効かない濃霧も小仏トンネルを過ぎたあたりで解消し、切れ間から遠くの稜線が望めるようになりました。

この時期、鶴川には鮎師が多いことを思い出して、とりあえず上野原ICはスルー。ややもして大月ジャンクションが近づいてきた時点では、周りを走っている四駆車やワゴンがみな釣り人のように感じられ(単なる思い込みですが)、それらがみな右車線を飛ばしていくので自分は逆らうように河口湖線へとハンドルを切りました。結果、釣行先はまたまた鹿留川に決定。ローソンで入漁券と軽食を買い込み、鹿留入口の交差点を左折していつもの道を進みます。

腕時計に目をやるとまだ5時半前。さすがに一番乗りだと思いきや甘かった! 天岩橋の先に、早くも1台停まっております。その高級SUVには見覚えがあって、確か5月に鶴川の上流部に行った時にも鉢合わせしたんだよなぁ。オーナー氏の姿はなく既に入渓した模様です。やむなく、さらに進んで東屋のスペースに駐車すると、すぐに地元のエサ釣りおじさん2人がやってきました。雨が降った翌朝は思っていた以上に賑やかです。「ここから入るの? じゃあもう少し上に行くとするか。この前、近くに熊が出たから互いに気をつけようや」と言い残し去って行きました。

雨が降っても、なかなか水位が戻らない鹿留川
雨が降っても、なかなか水位が戻らない鹿留川

そうなんですよね。先週水曜、鹿留川支流の山間部でクマが人を襲う出来事があったばかりです。ニュース動画をネットで見ると、その前の土曜日の最後にちょっとだけ竿を出した場所が映し出されていて、ゾッとしたのでありました。山遊びは常に危険と背中合わせ。この日ばかりは怠ることなく熊鈴を腰に下げ、すぐに取り出せる所にホイッスルも準備して、いざ入渓です。

──前日に降った雨は乾ききった山肌を湿らせる程度の効果しかなかったのか、川は渇水気味のまま変わり映えありません。魚たちが大胆にシャッフルされたような気配は皆無です。やや拍子抜け。それでも結論から言えば、最初の数時間は活性の高い状態が続きました。フライが着水するや否や出たり、やや離れた場所から追い食いしてきたりと、ヤマメはかなり積極的。岩陰の澱みからはイワナも現れ、気が付けばツ抜けです。

早朝の数時間だけ高活性の状態が続きました
早朝の数時間だけ高活性の状態が続きました

しかーし、それは9時くらいだったでしょうか。それまでテンポよく釣れていたはずなのに、バタッと魚信が途切れました。先行者がすでに歩いたエリアに突入してしまったのか、水温や陽射しなど何らかの自然条件の変化なのか、食うだけ食ってシェスタモードに突入したのか。フライのパターンやサイズを変えてもてんでダメ。水面下に釣り人警報が発令されたんじゃないかと思わせる急変ぶりです。

これだから釣りってのはよく分かりません。いわゆる朝マズメが長く続いただけ? 好調な滑り出しの先の大失速。パチンコでいうなら確変連チャンモードを抜けた後に1000回まわすも当たりなしってところ。次々にヒットした時間帯はまるで夢のよう。何だか急に現実に引き戻された感じで、やり残してきた仕事のことも気になり始めました。

ずるずると2時間近く粘るもチビヤマメがじゃれるだけ。最後に納得の1匹を釣って納竿としたいところでしたが、沈黙の水面を前に諦めざるを得ませんでした。本日終了! 12時前に撤収です。

林道を下っていくと、朝は人影が無かった河原でバーベキューや川遊びに興じる若者グループや家族連れが目立ちました。そうか~、間もなく夏休みが始まると、どこの川も賑やかになるし高速も混むんだよなぁ。そう考えると、このところ諸般の事情で半ば定番化しつつある半日パターンも悪くない。グループ釣行の際もピックアップルートや時間帯を調整して、早出早帰りするのもありかな。

岩陰に潜むイワナも時折顔を出します
岩陰に潜むイワナも時折顔を出します

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