フライから我欲を消すことの難しさ

5月30日の午前、奈良子川の中流域に竿を出しました。初めて入渓するエリアなので勝手が分からず、とりあえずゆっくりと釣り上がりです。少し行くと、陽当たりのよいヒラキがあって、その中央辺りに1匹のヤマメがいるのに気が付きました。遠目に見ると、20cm弱ってところかな。

観察していると、水面を流れてくる小さなエサ?をついばんでいます。派手にライズすることなく、スッと吸い込む感じ。何かの拍子に奥の方に泳いでいっても、また同じ場所に戻ってきます。さらに眺めていると、やや左奥の方に、同じような行動をしているヤマメがもう1匹いることが分かりました。

陽当たりのよいヒラキにヤマメが出て捕食を繰り返していたのですが…
陽当たりのよいヒラキにヤマメが出て捕食を繰り返していたのですが…
見えていて、しかも捕食体制にあるヤマメを狙うなんてこと、普段はなかなかありません。ちと、緊張しちゃいます。まずは16番のパラシュートでトライ。珍しく、第一投がうまくいきました。やや上流からフライがゆっくり流れ、ヤマメの鼻先に差し掛かって…ん? 完全に無視されました。え〜なんで? フライを変えずにもう1投。今度はチラ見したように思えましたが、それでも口は使いません。

焦るな焦るな、と言い聞かし、時間をかけてフライチェンジです。次なるフライは、ここのところ相性の良いソラックスパターン。フォルスキャストで距離を測っておいて、そっと水面に落とします。今度こそ、と思いましたが、やはり直下まで寄ってきながら決して喰ってはくれません。色なのか、サイズなのか、はたまたマイクロドラグなのか…。何かが原因で最後の捕食スイッチをONにできません。

その後も、手を変え品を変えしてみましたが、まったく歯が立たない状況が続きました。悔しいけど、諦めるしかないようです。奥のもう1匹を狙えば、違う展開があるかもしれない。そう考えて場所を移動しようとした時、気配を感じ取られたのか、先ほどのヤマメに走られてしまいました。あちゃー。気がつけば、もう1匹の姿も見当たりません。待てば戻るかと思ったけれどダメみたい。陽がジリジリと照りつける中でシビレが切れ、白旗を上げることにしました。

絶好のチャンスをものにできなかったことで、少なからずテンションダウンです。やや先の川辺が木陰になっていて、腰掛けられそうな倒木も見えました。給水して、気分転換でもしますか…。適当にフライを投げつつ、その場所に向かっていた矢先、視野の片隅で水面が弾けました。咄嗟にロッドを煽ると、何とフッキングしております。ラインをたぐると19cmのヤマメでありました。

一投入魂している時には見向きもされず、気まぐれに放ったフライには一発で出る…。合点がいかないけれど、こんなもんなんですかね。過度の気合はラインを伝わり、フライから何かのシグナルを発するのだろうか!? 木化け石化けのアプローチが大事とよく言われますが、さらには“前のめりの釣り欲”を消すことも意識しなければ、と感じさせられた一幕でした。

無心で、いや正確には気まぐれで投げたフライに出た奈良子川のヤマメ
無心で、いや正確には気まぐれで投げたフライに出た奈良子川のヤマメ

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