増水した鹿留川での意外な展開

海の日をからめた3連休、家庭の事情で釣りに行けそうなのは日曜日だけという状況にありました。ただし、いつものメンバーとの調整は折り合いがつかず…。どうしたものかと悩みつつも、晴れの予報に勢いづく釣り欲には抗い難く、単独ででかけることにしました。

釣行先に選んだのは鹿留川。今シーズン、とある支流との相性が良いと感じていたことが背景にあります。もし早々に満足いく釣りができたなら、高速の渋滞が始まる前に引き上げて来ようとの思いもあって、幾分早めの出発です。

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7時半に到着した現地は、いつもと様子が違いました。沢筋の林道の大半が水浸し。山肌のそこかしこから水が流れ出しているようなのです。不穏に思いつつも、しばし進んで見覚えのあるスペースに停車し、あらためて川の様子を見に行くと…水かさが倍増し、荒々しい流れになっているじゃないですか!!

期待を寄せていた鹿留川の支流は増水で釣りになりませんでした
期待を寄せていた鹿留川の支流は増水で釣りになりませんでした

少し前に西日本を縦断した台風11号は、関東近郊の山間にも相当量の雨を降らせたようです。そういえば、木曜日だったかは中央道も八王子とか上野原あたりで一部が通行止めになっていたんだった。いくら上空が晴れ渡っていても、これじゃ釣りにならないか!?

とりあえずロッドを手に川べりに立ってみましたが、フライをゆっくりと流せるような場所がほとんどありません。落ち込み脇の反転流など、多少なりとも可能性がありそうなところを探ってみるも反応なし。魚たちは、水が引くまでの間しばし、避難を決め込んでいるようです。この沢には早々に見切りをつけて、鹿留川の本流に移動することにしました。

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ここでも予想外の展開が待っていました。管理釣り場、ベリーパーク in フィッシュオン鹿留の先にある林道ゲートが閉鎖され、クルマが通れなかったのです。どうしよう? 下流域で管釣りから流れ出たニジマスでも狙おうか──そんな邪な考えをふるい落とし、一念発起して林道を徒歩で上流域に向かうことにしました。

道すがら川の様子を伺うと、本流筋も随分と増水しています。それでも、先の沢よりは川幅がある分、多少なりとも釣りが成立する場所がありそうに見えます。それにしても、茹だるような暑さ! 汗が吹き出し、歩くペースも徐々に落ちてきます。このままじゃ熱中症にもなりかねないので、天岩橋の先から入渓することにしました。

実感したのは、林道から見下ろす流れと、川面に立って間近に見る流れは随分と違うってこと。濁りこそありませんが、想像以上に水勢があって、ドライで攻められる場所は限定的です。ともかく、ここまで来たからには実釣あるのみ。フロータントを塗りたくって、いざスタートです。

──所々で小さなヤマメがフライを突きにきますが、なかなか針がかりには至りません。それでも、程よい間合いで魚の姿が確認できるので、次こそはと先に進んでしまいます。そんな状況がどのぐらい続いたのでしょうか。気が付くと、いつもクルマを停めている東屋の脇まで辿り着いてしまいました。随分と釣り上がって来たけど、いまだ釣果ゼロ。急激に空腹感を感じたので、ひとまずオニギリを食べて小休止です。

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林道を少し歩いて、虹の木橋の先の堰堤上から再入渓。少しは水が引き始めたのか、そもそもの地形の関係なのか、ここまで来ると流れは多少の落ち着きを取り戻していました。気分一新して釣り始めても、しばらくは何の変化もなし。それでも、飽くことなくロッドを振っていたら、念願の1匹目がかかりました。15時過ぎのことです。12cmとはいえ、とても眩しく見えました。

──それは何だったのでしょう。水勢の変化? エサの集中流下? 魚たちのライフサイクル? 何が理由かは分かりませんが、状況が一変しました。まさに「捕食スイッチが入った」という表現がピッタリという感じで、大きさこそ20cmに届かないものの、ヤマメが次々にヒットするようになったのです。イワナ1匹を交え、あっという間に9匹を数えました。こんなこともあるんだという驚き。

ひとしきり楽しんで腕時計を見ると、16時。そろそろ引き上げ時です。釣り上がってきた河原を戻りつつ、最後の最後、かつて大きめのイワナを掛けたことがあり、その日は全く音沙汰のなかったポイントを締めにすることにしました。

エルクヘアカディスを結んで第一投。すると、いきなり出ました。20cmながら体高のあるヤマメです。まだ時合ってのが続いているのでしょうか!? 欲張りついでに同じ場所でもうひとねばり。何回か流すも、さすがに次はないかと諦めかけた矢先、いきなり水面が割れました。今日イチの引きをいなしてランディングしたのは25cmちょいの太ったヤマメ。出来過ぎの展開でのフィニッシュとなりました。

この日、最後の最後に釣れたヤマメ。1日の苦労が報われました
この日、最後の最後に釣れたヤマメ。1日の苦労が報われました

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帰途は25kmにも及ぶ、ウンザリするような大渋滞。日中は随分と歩いたし、車中に話し相手もいないので、居眠り運転だけが危惧されました。しかし、ラスト1時間で“ツ抜け”という、どんでん返しの興奮は、睡魔を追い払うのに十分な効果を発揮したのでありました。

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